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製造業におけるAI活用の現状と今後について|工場などでの導入事例とともに解説

AIに対する注目度が高まっており、製造業でもAIを導入するケースが増えています。この記事では、製造業でAIを活用したいと考えている企業に向けて、AI活用のメリットや導入事例などを解説します。製造業でAIを導入するうえでの注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

製造業におけるAIの現状

AI活用の重要性が多くの人から認識されるようになり注目を集めていますが、製造現場での実用化にはいまだ課題も残っています。少し古いデータですが経済産業省が公表した「2019年版ものづくり白書」では、74.9%の中小企業が製造技能のデジタル化に「取り組んでいるが、上手くいっていない」「取り組みたいが、着手していない」と回答しています。

製造業におけるAI活用の種類

製造業ではAIはどのように活用されるのでしょうか。ここでは、製造業におけるAI活用の種類について解説します。

需要予測


AIを活用すれば、高い精度で製品に対する需要を予測できます。過去の売上実績、天候、政治情勢などの幅広いデータをあわせて分析でき、実情に即した予測を実現します。

作業自動化


製造業にAIを導入すると作業の自動化も可能です。従来の産業ロボットとは異なり、人による業務を共同で進める協業ロボットが活用され始めたことで、在庫管理や仕分け作業、梱包・ピッキングなどの作業を自動化できるようになりました。これまでは全て人手で行われていた作業の効率化にもつながっています。

不良品選別


製造業においてAIが最も活躍しやすいのは、生産ラインで不良品を選別する検品作業です。たとえばEAGLYSでは、AIの画像解析技術を用いて製造ラインの不具合検知の業務改善に取り組んでいます。高い精度で画像解析を行うことで、正確性の高い検品業務を実現しています。

製造現場におけるAIの画像解析技術の実例はこちらをご参考ください。

セーフィー×EAGLYS AI画像解析サービスを共同開発~24m先の異物も91%の精度で検知~

予知保全


AIを活用すれば機械の故障も事前に予測でき、生産ラインを安定的に稼働させられます。画像や音声などのデータに加えて、過去の故障に関する情報をAIに学習させることで、将来的に機械が故障するリスクやタイミングを予見し、機械の故障による生産ライン停止や点検などのダウンタイムを減らすことができます。

サプライチェーン全体の最適化


AIによる分析を行うと、製造、販売、物流といったサプライチェーン全体の最適化を実現できるようになります。各企業で持つ管理データや在庫情報などを一元管理し、市場の動きに合わせて人・物・コストをバランスよく配置することが可能です。

製造業においてAIを活用するメリット

製造業でAIを活用すると、さまざまなメリットがあります。ここでは、具体的なメリットについて解説します。

労働力不足が解消する


少子高齢化による労働力不足が問題になっており、製造業でも人手が足りなくなっています。しかし、AIを導入すれば業務の自動化や効率化を実現でき、少ない人員でも業務をスムーズにこなせるようになります。

コスト削減・生産性が向上する


AIを活用すればヒューマンエラーや部品ロスなどを減らせるため、コスト削減や生産性向上も期待できます。課題の明確化や数値目標の設定もしやすくなり、現場との合意も形成できます。そのためには、ビジネス課題にフォーカスして目的達成ができるAIを設計することができ、さらにAI導入後やテスト運用が始まってからの本格実装までサポートしてくれるパートナー企業を見つけることが大切です。

製造の品質や安全性が向上する


AIの有効活用により危険な作業を機械に任せられるため、事故の防止につながります。ヒューマンエラーによる不良品の発生や異物の混入も避けられます。定型業務も自動化でき、製品の品質も安定させられるでしょう。

AI導入による製造業の変革

製造業は日々進化していくAIによってどのように変化していくのでしょうか。ここでは、製造業におけるAI導入の変革について解説します。

ロボットとの協働


製造業では、中小企業でも生産現場にAIを導入するケースが増えています。ロボットと既存の生産設備と組み合わせて協業させることが可能ですが、協業を成功させるにはPoCの定義をしっかり定める必要があります。PoCの定義が曖昧なままAIを導入するとうまく運用が進まず、PoC倒れになるリスクが高まります。

製造工場の完全無人化


製造工場では、ロボットの協業から完全無人化へのシフトも始まっています。工場の稼働を完全に自動化すれば、より幅広い製品を製造できるようになります。スマートファクトリー化やインダストリ4.0に注目が集まっており、製造工場の完全無人化を意識する企業が増えてきました。

機械や端末に搭載するAIは、エッジAIと呼ばれています。エッジAIについては別記事で詳しく解説しています。

製造業におけるAI活用の流れ

製造業でAIを導入する際は、どの業務にAIを取り入れるのか具体的に検討を進める必要があります。用途や目的を明らかにしたうえで、AIでの分析に必要なデータ量・質を想定します。データが収集できたら、AIが分析・学習できる形に成型したり不足のデータを補います。

このように、AIを活用する際には一般的にはさまざまな工程やデータ加工・分析技術が必要になります。

製造業におけるAI活用事例

実際に国内の企業ではどのようにAIを活用しているのでしょうか。ここでは、製造業におけるAI活用事例を紹介します。

自ら学習するAIとの協働


東工大発AIベンチャーのSOINN株式会社では「人工脳」と呼ばれるAIを開発しています。ディープラーニング(深層学習)とは異なるアプローチを採用し、人間と協業して業務を進めることで現場の知識やノウハウを学んでいきます。製造業では一定の成果が出ていることから、今後は物流など多業種への展開も期待されています。
※参考:ABOUT SOINN

生産ラインの無人化


生活用品の企画・製造から販売まで行うアイリスオーヤマ株式会社のつくば工場では、LED照明の生産ラインの無人化に成功しています。基盤実装から製品の梱包までの作業を一貫して行うことで需要の増加にも素早く対応でき、高品質な製品の安定供給を実現しました。
※参考:アイリスオーヤマ株式会社

画像解析による工場内の異常検知


エアバッグの基幹部品の製造を手がけている株式会社ダイセルは、画像解析により工場内で発生した異常を検知する仕組みの実用化に成功しています。複数のカメラから取得した画像データを分析し、監督者のウェアラブル端末にアラートを通知します。これまでに得られた画像データを蓄積・解析することで、不具合の原因の究明や改善が必要な箇所も把握できます。
※参考:株式会社ダイセル

品質検査の自動化


フォルクスワーゲン・グループに属するドイツの自動車メーカーのアウディでは、プレス工場にディープラーニング(深層学習)をもとにした技術を導入。製品の品質検査の自動化に成功しました。AIの分析により、精密な検査をより着実に実行できるようになっています。

需要予測による仕入れの最適化


ホームセンターを運営する株式会社グッデイは、AIの活用により需要予測の精度を向上させています。従来は属人的な方法で需要予測を行っており、機会損失が発生したり在庫管理に手間がかかっていました。データをもとに合理的な分析をした結果、在庫の最適化や売上増加を実現しています。
※参考:株式会社グッデイ

荷降ろしの自動的で従業員の負担を軽減


知能ロボットコントローラを開発・販売している株式会社MUJINは、AI技術を活用してピッキングができる「ピックワーカー」を開発しました。ばら積みができるピッキング用ティーチレスコントローラは、世界初です。画像解析によるピッキングや荷降ろしに対応しており、在庫の管理を効率化しています。
※参考:株式会社Mujin

機械学習を活用したAI導入で検査効率を向上


食品メーカーのキユーピー株式会社は、惣菜の原料検査にAIを搭載したロボットを導入しています。目視による検査は負担が大きく、ヒューマンエラーが発生するリスクもあるためです。AIの導入により、作業の効率化やスタッフの負担軽減につながっています。
※参考:キユーピー

製造工程の全自動化による生産量の倍増


タイヤメーカーの株式会社ブリヂストン彦根工場では、スタッフの負担を軽減するため、AIを導入して製造工程を全自動化しています。その結果、生産性は既存成型と比べて約2倍になり、品質は従来の製法と比べて15%も向上しました。また、全自動化によってスタッフの教育にかかる時間も大幅に削減されています。
※参考:株式会社ブリヂストン

 

倉庫作業の自動化による90%の省人化

アパレル製造小売業を展開する株式会社ファーストリテイリングでは、在庫を管理している倉庫に画像認識ができるAIを導入しました。それまで100人で対応していた業務が10人程度で対応できるようになり、大幅な省人化と作業の効率化に成功しました。
※参考:FAST RETAILING CO., LTD.

スマートファクトリー化に向けた生産ラインの自動化


菓子メーカーの株式会社ロッテでは、生産ラインを自動化するためにAIを導入しています。製造した菓子の状態を画像で分析し、欠けや割れなどを自動で判定できるようにしました。簡単に操作できるため、AIの知識がない担当者でもスムーズに利用できています。
※参考:ロッテ

独自に開発した外観検査AIで25%の工数減


富士通グループの技術開発の中心組織である株式会社富士通研究所は、外観検査AIを独自に開発しました。人工的に作った問題のある製品をAIに学習させるだけで異常を検知できます。このAIの活用により、製品の検査にかかる工数を25%も削減できています。
※参考:富士通

製造業においてAIを導入する際の注意点

製造業でAIを導入する際は、自社が抱える課題や導入目的を事前に明確化しなければなりません。さらに投資費用の検証を行なうためにも効果を計測できるように数値目標を設定し、目的達成に向けた期待値の調整や、現場で働く社員の認識を統一する必要があります。

これらのプロセスは決して簡単ではなく、強い意思決定に加えて経験や社内外の関係者との調整を求められます。実現可能な期待値調整をおこなったり、不足の事態に対応し、AI導入計画を全面的にサポートしてくれるパートナー企業を見つけることが大切です。できることとできないことを明確に示しながらAIを設計し、AI導入成功に導くことができるパートナー企業を選びましょう。

まとめ

製造業ではさまざまな場面にAIが活用されています。業務効率化や省人化、生産コスト削減や新素材の開発など、AIを導入することで多くのメリットを得られ、さらなる事業拡大や企業価値の向上も期待されています。

EAGLYS株式会社では、個社に最適なAIを設計・開発しています。AIのパッケージ品や簡易モデルでは実現しづらい場合でも、構想策定段階から協業しアイデアを具現化。精度・汎用性も高く、現場のニーズに即したさまざまなAIモデルを設計します。

過去のPoC経験等を踏まえて新しい価値創造に挑戦したいと思われる方はぜひ相談してください。

 

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