コラム

【業界別】秘密計算の活用事例5選を紹介

AI秘密計算フェデレーテッドラーニング

目次

秘密計算はデータを暗号化したまま計算できる暗号化技術です。海外の研究に端を発した技術領域で、ビッグデータや顧客情報など企業の重要情報を分析する際や、複数事業者間でデータ連携を行う際に活用されています。

この記事では、具体的にどのような業界・業種で秘密計算技術が使われているのか、事例を用いてご紹介します。

※秘密計算の概論や主な手法については、「秘密計算とは?」の記事をご覧ください。


秘密計算はデータを暗号化したまま計算をする技術

秘密計算は、データを暗号化したまま計算する新しい暗号化技術です。1980年代に計算機科学者による研究成果が発表されて以来、研究が進められてきました。

従来の暗号化技術では、データの通信時や保管時に暗号化していても、連携・処理する際は暗号を解読し元データに戻す必要がありました。対して秘密計算ではデータを常に暗号化したまま連携・共有し、分析・処理することができます。

秘密計算を活用することにより、これまでデータを処理する際の情報漏洩リスク対策として行っていた、データマスキング作業や特別なセキュリティ対策ソフトの導入、堅牢なサーバールームの設置が不要になります。

またセキュリティを維持しながら機密データを高い精度で分析できるだけでなく、企業間でのデータ連携による新規事業開発や需要予測も、スムーズかつ低コストで行うことも可能になるのです。

日本では製造や医療、金融といった業界を中心に実用が始まっています。ここでは、実際にEAGLYSが取り組んできた事例を業界ごとにご紹介していきます。


【業種別】秘密計算の活用事例5選

【製造】クラウドでAIモデルを計算処理。パフォーマンスの向上を実現


某製造会社は従来、自社製品の品質や関連パーツの生産状況を素早く把握・分析するため、工場の敷地内にサーバールームを設置し、分析を行っていました。しかし、サーバーの運用保守やデータ分析担当者の物理的な移動、データ解析用AIのメンテナンスなどにまつわるコストが肥大化し、問題視されていました。

そこで秘密計算技術を採用し、各工場の生産状況などの機密データを、暗号化したままクラウド上で共有。さらに独自開発のAIモデルも暗号化したままクラウド上に置くことで、外部からの攻撃を懸念することなく、クラウド上で機密データの解析ができるようになりました。

この方法であれば、データ共有から分析、AIモデルの更新までクラウド上で完結するので、サーバー設置や担当者の移動を伴わず、さらにAIモデルが更新されるたびに発生していたメンテナンスも必要ありません。


これにより、関連製品の製造工場との間でリアルタイムでの生産量調整が可能に。コスト削減と同時に、ラインの稼働率向上や出荷計画のパフォーマンス向上にも活かしていただいています。

参考 製造業界でのユースケース:https://www.eaglys.co.jp/use-case/manufacturing


【医療】診療データを秘匿化したままAI解析を実現。医師の診断支援へ


医療・ヘルスケア領域では、診断の効率化や個別化医療の実現に向けたデータ連携・利活用が期待されています。例えば臨床診断の際に、患者の生活習慣や薬の服用履歴といった文字情報だけではなく、問診中の音声等もデータ化して、AIによる医師の診断支援に活かす取り組みなどが考えられてきました。

しかし診療データは機密性が非常に高いことから、慎重な利用が求められるものです。AIによる診断支援のためには、AIやクラウド等の分析環境に診療データを置かねばならず、データ漏洩や秘匿性の懸念を解決できていませんでした。

この課題に対して秘密計算を用いることで、カルテなどの文字データと臨床診断の結果を共に暗号化して分析環境に置き、常時暗号化したままで解析ができます。

現在は、こうした通信時や解析時の外部攻撃によるデータ漏洩リスクに対応したAI解析を、「患者一人ひとりの体質や病状等に合わせた診療」や「複雑な症例に対する診断支援」に登用する取り組みが進められています。

参考 医療業界でのユースケース:https://www.eaglys.co.jp/use-case/medical


【金融】取引の分析・診断コストを削減、複数機関で不正取引の傾向を共有


金融機関では、年々高度化する不正取引に対応するため、顧客情報と顧客に紐づく取引データを解析し、傾向値を算出することで対策を行っています。

この時、取引履歴に紐づく個人情報である解析データは事前に匿名加工する必要がありますが、加工によって分析に活用できるデータの種別や項目が少なくなってしまうこと、特徴的な取引傾向を部分一致検索ができないために分析精度が著しく下がってしまうことが課題となっていました。

秘密計算では、データを暗号化する際に暗号鍵とデータを分離して管理するため、たとえ解析時に攻撃を受け暗号化データが漏洩しても、取引履歴や個人情報が漏洩することはありません。この秘密計算の導入によってデータ加工作業が不要となり、迅速かつ高精度のデータを活用した不正取引検知を行えるようになりました。

参考 金融業界でのユースケース:https://www.eaglys.co.jp/use-case/finance


【交通】セキュアな環境で乗降データと購買データを活用


交通領域においては、電車やタクシーの「乗降データ」と、ユーザーの「決済(購買)データ」をグループ企業間で連携し、駅ビルや駅ナカ施設の販促活動や不動産戦略に活かす取り組みなどが長く構想されてきました。しかしこれらは個人情報と直結するデータであるため、機密性・秘匿性を担保できるかが構想実現の活用の障壁となっていたのです。

某社では秘密計算の利用によって、個人情報に近い乗降データや決済データを暗号化したままの状態で分析することを実現しました。これにより、グループ企業での販促や乗客誘導の改善、他社との連携など、データ活用の幅が広がっています。

今後、位置情報や決済履歴にとどまらず、MaaSを介して集まったさまざまな機密データの活用が検討される中で、秘密計算を組み込むことによってサービスの幅を広げたり、設計改善につなげることが期待されています。

参考 交通業界でのユースケース:https://www.eaglys.co.jp/use-case/transportation


【商社・卸】秘匿データの連携でサプライチェーン全体の効率化


グローバル化や労働環境の変化、DXの流れに伴い、サプライチェーン全体で資源やコストを最適化する「サプライチェーンマネジメント」が重要視されています。しかし原材料・部品調達から販売に至るまでのすべての工程で、モノだけではなくデータまでもシームレスに連携させるために、複数の事業者間でシステム整備やデータマネジメント、セキュリティポリシーの調整などを行っていては、多くのコストがかかってしまいます。

そこで、各事業者でポリシー調整やデータ加工作業を行うことなく、互いにデータを秘匿しながら必要なデータのみを開示できる仕組みとして、秘密計算を採用いただきました。

機密情報である販売実績や受発注履歴を暗号化したまま上流事業者に連携することで、生産ラインの稼働や材料調達の調整に活かすなど、サプライチェーン間での資源/在庫管理の最適化・廃棄ロス削減につなげていただいています。

さらに、EC市場拡大に伴って年々肥大化する流通・物流領域においても、環境に配慮した配送計画の実施などに活用いただくことが期待されています。

参考 商社・卸業界でのユースケース:https://www.eaglys.co.jp/use-case/trading-company


まとめ

本記事では秘密計算の活用事例を5業種に分けてご紹介しました。

いずれも「複数事業者間でのデータ連携」や「信頼できない環境でのデータ共有・活用」が求められる場面での、代表的なユースケースです。これらのケースでは、データを暗号化するだけではなく、事業者でデータ開示範囲をコントロールしデータ自体の秘匿性を担保するニーズも同時に叶えられています。

顧客情報や企業の取引実績など最重要かつ大量に蓄積されたデータを分析・解析し、新たなビジネスに活かしたい場合に、秘密計算が採用されることが多くなっています。

EAGLYSでは、秘密計算を中心とした暗号化技術によって、企業のデータセキュリティ・データ利活用を支援しています。この記事でご紹介した例にとどまらず、多種多様な業種での社会実装・実証実験に取り組んでいます。


これまで業界に先駆けて多くのデータ利活用支援に携わってきた経験を活かした提案を行っていますので、
「秘密計算に興味がある」「自社やグループ企業のデータを利活用したいけれども、具体的な運用イメージが湧かない」といった状態から、お気軽にご相談ください。

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