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データ利活用で必要なこととは?活用時の課題から読み解く

AIに対するニーズの高まりを受け、ビッグデータの利活用方法に着目する企業も増えています。しかし現状、データの利活用には解決すべき課題があることも事実です。今回の記事では、企業におけるデータ利活用の実情や、データ利活用を進める上での課題・それを解決するための技術や手段を紹介します。

データ利活用とは

データ利活用をしている様子

データ利活用とは、企業や組織に蓄積されたデータを「利用・活用」することを指します。たとえば、過去の売上情報や顧客情報をもとに営業計画を立案したり、自社が提供している製品やサービスに関する情報を他社へ提供し新たなサービスや機能を開発したりすることもデータ利活用にあたります。

データ利活用の目的

経済のグローバル化や日本国内における深刻な人手不足等、企業はいま、まさにビジネスモデルの変革や業務の合理化が求められています。

たとえば、日本の基幹産業ともいえる製造業は、単独の企業だけで成立するものではなく、部品の製造メーカーや配送事業者、そして小売店舗等さまざまな企業がサプライチェーンを構築しています。

サプライチェーン全体の合理化によって売上状況を可視化し生産量を調整したり、生産量調整によって在庫管理のムダをなくしたりといったことが可能です。さらに配送状況をリアルタイムで確認することで効率的な配送計画が立案できます。

このように、個別の企業の業務効率化を図るためだけでなく、サプライチェーン全体を最適化しムダを削減するためにもデータ利活用が求められています。

データ利活用の現状

総務省が2020年3月に公開した「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究の請負報告書」のなかで、大企業は約9割、中小企業においても半数以上がデータ利活用に取り組んでいることが分かっています。

「分析に活用しているデータ」というアンケート項目では、「顧客データ」と回答した企業の割合がもっとも多く、大企業で4割以上、中小企業でも2割以上にのぼっています。また、それ以外にも「電子メール」や「アクセスログ」、「経理データ」、「業務日誌データ」等も上位にランクインしていることが分かりました。

 

出典:総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」

反対に、GPSデータやセンサーデータ等の活用は大企業でも1割程度にとどまっており、中小企業ではわずか数%の利用率となっています。GPSデータやセンサーデータは専用ツールがなければ取得が難しいことや、業種によってもデータ利活用のニーズが異なることも大きく影響していると考えられます。

データ利活用における課題

このように着々と進みつつあるデータ利活用ですが、取り組みの中心が大企業だったり、活用しているデータの種類に偏りが見られたりといった様子が見られます。今後グローバル化が進む社会で企業が競争力を維持するためには、データ利活用が大きな課題といえるでしょう。

では、日本でデータ利活用が進まない背景には、具体的にどのような課題が考えられるのでしょうか。データ利活用にはいくつか課題があるものの、典型的な課題として「データの不在」と「データの秘匿性」が挙げられます。

データの不在

データを効果的に利活用するためには、膨大な量のデータが不可欠です。たとえば、AIを使って顧客の属性をもとに製品ニーズを分析するためには、顧客の属性データや実際に購入した際のPOSデータ等が必要です。

しかし、大企業と中小企業とでは顧客の数が異なる以上、収集できるデータ量にも差が生まれてしまいます。もちろん、外部業者のデータやウェブサイトから入手できるオープンソースデータ等で補うこともできますが、顧客数が少なく収集できるデータ量も限られる中小企業では、データを利活用しようと考えても集められるデータに限りがあるため、業務に役立つ精度の分析が難しくなります。

このように、企業規模や業種によっては十分なデータが集められず「データの不在」という課題が生じ、データ利活用が進まない可能性が考えられます。

データの秘匿性

データの不在を解決する一例として、企業同士がデータを連携・共有する方法もあります。

しかし、共有するデータには個人情報や機密情報等が含まれているため、連携・共有には高いハードルが存在しています。たとえば、顧客の年代や属性が含まれている情報を連携するには個人情報保護法に準拠する必要があり、データの共有が難しい場合もあります。

また、データ利活用そのものの課題を解消するためには技術的な知見を持った人材も必要です。高度な分析をする際は経験や知識の豊富なデータサイエンティストが必要ですが、データ利活用は費用対効果が見えにくく、必要な人材の投資に悩む企業が多いこともデータ利活用が進まない一因として考えられます。

EAGLYSのデータ利活用支援

EAGLYSのサーバの様子

データ利活用が進まない要因として挙げられる「データの不在」と「データの秘匿性」は、具体的にどのような解決策が考えられるのでしょうか。今回はデータセキュリティ・データ利活用を実現する、EAGLYSの「秘密計算技術」を参考に解説します。

データを秘匿化したまま分析・共有できる秘密計算

秘密計算とは、データを暗号化した状態で解析や計算を可能にする技術です。

通常、暗号化とは主にデータの通信時や保管時にのみ対応するものであり、データの解析や計算を行う際は復号するのが一般的な使われ方です。

しかし、データを直接扱うためにはクリアすべき法規制等のハードルが高く、データの連携・共有が進まないといった課題があります。さらに、近年はサイバー攻撃の高度化・複雑化によって情報漏えいの危険性が高まりつつあるため、連携・共有にはより一層の対策が求められています。

データを暗号化したまま計算できる秘密計算では、法規制をクリアした状態で企業同士のデータ連携を進められます。

さらにAI解析を組み合わせることによって、自社の条件にマッチしたデータが不足している場合でもAIが類似するデータやこれまでに使用したデータをもとに必要なデータの特徴を予測。不足データを補いつつ、精度の高い分析が可能です。

秘密計算の仕組みや主な手法、活用例などについてはこちらのリンクをご参考ください。

秘密計算を使用したセキュリティ技術

EAGLYSが提供する「DataArmor GATE DB」は、秘密計算技術を用いて高いセキュリティを維持しています。Data Armor GATE DBでは暗号鍵とデータを常時分離して管理する仕組みを採用しており、データベースやサーバーが攻撃を受けた場合でもデータの復号に必要な暗号鍵の流出を防ぎます。そのため、万が一の攻撃でもデータの流出を防ぎ、企業のデータ利活用を後押しします。

またDataArmor GATE DBは、既存のデータベースにインストールして使用するソフトウェア(現システムにアドオン導入できるゲートウェイ)のため、導入にかかる時間やコストを最小限にとどめながら専門的なデータ加工技術や処理技術を簡単に使えます。

データ利活用や企業間のデータ連携が進むことで、今後ますますAIの社会実装や商用利用が加速していくと考えられます。

企業のデータ利活用を後押しする「DataArmor GATE DB」の詳細は下記よりご覧ください

まとめ

企業のデータの利活用にはデータの「不在」や「秘匿性」にくわえ、技術的な知見を持った人材の確保が難しいといった課題があります。そのため秘密計算技術の活用等、全社的なデータ利活用、セキュリティ体制の見直しを実施し、活用を支える「土台」を構築する必要があります。

EAGLYSでは、AI解析等のデータ利活用とデータセキュリティを両立する解決方法として、秘密計算のほかに連合学習の社会実装支援も行っています。AI活用時のセキュリティ対策や、連合学習を用いた社内外でのセキュアなデータ利活用を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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