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AI外観検査とは?利用する企業が増えた理由やメリット、費用相場についても解説 

AI外観検査とは、AIの技術を用いて製品や部品などの外観を検査する手法です。

この記事では、現行の検査業務にAIを取り入れたい方に向けて、AI外観検査について詳しく解説します。AI外観検査を導入するメリットや活用時の注意点についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

AI外観検査とは

AI外観検査とは、AIの画像認識技術を活用して物象の外観を検査する方法です。

具体的には、検査対象の製品・部品等をカメラで撮影し、得られた画像データから状態の良否を判定します。検査と判定の作業を繰り返すことでデータが蓄積され、AIが自ら学習しながらアルゴリズムの精度を高めます。さらに、AIを組み込むことで新しいルールや検査基準が出てきた場合にも適応できるようにし、検査精度の向上も期待できます。

外観検査とは


外観の欠陥をチェックする外観検査は、従来、人による「目視検査」が主流でした。製品や部品の表面にキズや異物などがないかを目で確認し、音に異常がないか耳で聞くなどの手法です。

中でも、目視だけではなく、耳で動作中の異常音を聞いたり、鼻や舌・皮膚の感覚など五感を使う「官能検査」が代表的な検査手法です。

従来の外観検査とAI外観検査の違い


従来の外観検査とAI外観検査の大きな違いは、AI画像解析の技術を使うことです。


従来の外観検査の課題


【目視による外観検査】

目視による外観検査は、あらかじめ決められた検査項目を人が検査します。そのため、良否を常に均質に判定することは困難です。さらに、官能検査等の属人的な判定業務を新しい担当者に引き継ぐ場合、一定レベルの検査ができるまで訓練が必要となります。このように、目視検査では人件費がかさみ、検査の質を均等に保つことが難しい等の課題が顕在化していました。

【検査装置による外観検査】

検査装置による外観検査は、目視検査の課題を解決するために導入されてきました。あらかじめ検査装置に傷や異物の例を登録し、異常な状態を自動で検出します。これにより、一部の目視検査業務は省人化され、良否判定を均質に保つことが出来るようになりました。

しかし外観検査では、事前に傷や異物のパターンを装置に登録しておく必要があり、判定基準が明確になっている必要があります。これでは正常と異常の差を決めるには複雑な設定

さらに、一度登録したパターン以外の新しい不具合が出てくる場合は、判定を自動化された装置では臨機応変な対応が難しいため、一度ラインを止めてメンテナンスを行ったり、検査項目や基準を変更する等、人手で判断しない事による弊害が生まれていました。

このように、目視でも装置を活用しても、従来の外観検査には課題が残っていました。

AI外観検査との違い


AI外観検査は、多種多様なデータから、AIが自動で特徴を学習し、異常と正常を判断します。検査装置と違い、明確に正常と異常の定義する必要がない上、判断基準のメンテナンスも一定レベルでは不要となります。

AI外観検査を利用する企業が増えた理由

AI外観検査が活用されるようになった背景には、従来の外観検査では検査の均質化が困難である点や、検査装置を設定・メンテナンスの煩雑さ、人件費などのコストの負担があげられます。

さらに、近年のAIの発展はめざましく、様々な学習方法や分析手法等が実際に使われるようになってきています。画像解析に使われる技術とは、ディープラーニング(深層学習)やMetric Learning(距離学習)、GAN(敵対的生成ネットワーク)、AutoEncoder(自己符号化器)などです。

これらのAI・機械学習手法の成熟によって多彩なニーズに対応できるようになったこともAI外観検査が世間に浸透してきた理由です。

AI外観検査を活用している業界

AI外観検査が活用されている業界や、検出できるものの具体例を紹介します。

なお、実際にAI外観検査が可能かどうかは、PoC(実証実験)を通して実現可能性や費用対効果を見極める必要があるので、あくまで参考情報としてご活用ください。

業界カテゴリ

検出対象

食品

異物混入、汚れ、焼け、キズ、破れ、へこみ、印刷ミスなど

金属

割れ、欠け、変形、サビ、バリ、打痕、寸法ズレ、気泡など

日用品

印字のミス、ラベルのズレや破れなど

医療

内容量や液面高さ、封緘シールやラベルのズレ、破れ、印字ミスなど

電子機器

断線、ショート、はんだ不足、汚れや異物の付着など

樹脂

キズ、汚れ、変色、気泡やシルバーストリーク、スジなど

AI外観検査を導入するメリット

AI外観検査を導入することでさまざまなメリットが得られます。以下ではメリットと活用時の注意点を紹介します。

細かい検査を高精度に行える


精密機器などの製造現場では、検査対象物自体が小さい分、いっそう厳格な検査が求められます。AI外観検査を用いることで、肉眼では見つけることができない細かい異物やキズも、高精度な画像認識システムを活用することで瞬時に検出できるようになります。

とはいえ、AIの精度を過信しすぎるのは禁物です。AIは100%完璧な結果を出せるわけではないため、適切な運用方法を設計することが求められます。

検査設定を簡略化


機械による検査を製造ラインに組み込んでいる場合には、新しい製品や仕様変更のたびに検査項目を調整する必要がありました。ときには作業ラインを長時間ストップさせてデータ設定をおこなわなければならず、設定作業に時間と手間をとられていました。

AI外観検査では、製品自体のアップデートを学習させることによって、設定作業の時間を短縮することができます。

しかし、検査内容の設定が簡素化できるかどうかは製品の仕様によるため、AIの学習機能がマッチする製品か、設定のマイナーチェンジはどの程度を想定しているかなど初期構築時点での確認が必要です。

人的ミスが減少する


目視の検査では人に依存する部分が多い分、ヒューマンエラーの発生が免れません。完璧な検査は難しく、体調不良でコンディションが悪いときや集中力が切れた際は、さらにミスが起きやすくなります。

AI外観検査は人の作業をAIと検査装置に置き換えているため、人為的ミスを減らし、作業員の負担を軽減しながら、一定の水準を保って検査を行えるのがメリットです。

ただし外観検査業務をAIに置き換えたとしても、不具合は起こりえますので、予期せぬ事態の発生を見越して、責任の所在を明らかにしておくことが重要です。

コスト削減につながる


また、目視の検査では、作業員を雇う人件費や教育費がかかります。一定の水準以上の検査を行えるように教育をおこなうのは当然ですが、作業員の入れ替わりが起こるたびに教育費を負担しなければなりません。

一方で、AI外観検査の導入にかかるのは検査機器やAIを組み込んだソフトウェア等のシステム初期費用のみであるため、長期的な視野でみるとコスト削減につながります。

生産性が高まる


AI外観検査では目視よりも迅速かつ安定的な検査が可能です。曖昧さなどの人間的感覚も数値化して表現することで、属人的な検査のムラを排除し、人が判断するためにかかっていた時間も短縮します。

さらに、属人的な作業が自動化されることで、一定以上のスキルを養うための教育コストも不要となります。

これにより、人材・コストの配分を最適化し、生産性の向上を目指すことができます。

ただし、検査の質を高度に保つためには、適切な検査精度のチューニングと大量の学習データが欠かせません。

AI外観検査を導入する際の流れ 

この章では、AI外観検査を導入する手順を紹介します。



導入目的の明確化と要件の整理


まずはAI外観検査を導入することで解決したい課題を明確にします。目的は工数削減か、品質の向上かといった目的を明確にすることでAI外観検査の仕様が異なってきます。

同時に、検討初期に決めたいこととして、AI外観検査の導入範囲や予算・スケジュール等です。目的に合わせて要件を整理していきます。

PoC(実証実験)でのモデル構築


導入に向けて構想や設計が固まったら、PoC(実証実験)をおこないます。この段階でAIにデータを学習させて、期待した効果が得られるかどうか確認していきます。

学習データを収集する際は、AIが正常と異常の違いを認識できるようにするため、画像データの解像度が重要なポイントになります。撮影時のピント調節や画角、照明といった環境の設計や製品の大きさ等を一定に保ち、実際の検査現場と同じような環境で実証実験をおこないます。

検査現場へ導入、運用フェーズへ


PoCで検査水準をクリアしたことを確認できたら、本番環境への適応に移ります。PoCで理想の結果や精度を得られなかった場合は、PoCフェーズで追加検証行ったり、学習データを見直したうえで、目的に沿ったAI外観検査のシステムへと最適化させてから本格的に導入を行います。

また、AIの効果を最大限に活かすには、現場が新しい検査方法を理解していることも大事です。社内への告知はもちろんのこと、これまでの業務が変更されることになりかねないため、使用上の注意点などをまとめ、現場からの理解を求めます。

さらに、運用後に判定基準が変更されることがあれば、その都度モデルの更新を行います。

AI外観検査の費用の相場

この章では、AI外観検査にかかる費用を紹介します。

PoC(実証実験)


PoCにかかる費用はAI導入支援の範囲やその企業のカバーする領域等で幅広く変動します。

100〜1,000万円と要件によりますが、多くは100万円程度です。なかには無料でPoCを行うメーカーや、トータルでサポートするメーカーもあります。

EAGLYSでは、個別の要件に従ってお見積りを提示しています。カメラの選定からフェーズごとのPoC提案等、AI導入の構想段階から関わり顧客に合わせて提案し、実装まで伴走します。

システムの構築やカメラなどの初期費用


システム導入にかかる費用は、AI外観検査の装置だけではなく、求める精度やスピード、外観検査の方法によっても違いが出ます。PoCの2倍〜5倍といった費用感になるケースが多いようです。

しかし、本格実装には個別画像撮影に必要なカメラや製造ライン数等、個別の要件による変動要素が多いため、AI開発会社との調整となります。

検査のレベルを高めるにはAIの学習期間が必要

AI外観検査は運用までに時間がかかります。一定程度の効果が得られるようになるまではAIに学習させる時間が必要となるためです。検査結果のデータが少ないため、AI外観検査の機器を導入した直後からすぐに使えないケースもあります。特に取り扱っている製品が細かいほど、学習期間も求められる点を考慮しておいてください。

まとめ

従来は目視による外観検査が一般的でしたが、AI技術の発展により、外観検査にもAIが活用されています。AI外観検査を導入することでコストや人的ミスの削減、生産性の向上など、さまざまなメリットが期待できます。

実際にAIを活用して外観検査を自動化する場合は、PoCを通して精度を上げたり、AIの学習期間も要したりなど、個別の調整項目が多いため専門知識を持つ人物への相談がおすすめです。

EAGLYSのAI開発支援では、AI導入の構想段階から携わり、高精度のAI実装を実現していきます。高い技術を備えたエンジニアがPoCの設計やAIモデルの作成を行います。製造業を中心とした社会実装例もご紹介できますので、外観検査をAIに置き換えることを検討している方はぜひ、EAGLYSにお問い合わせください。

 

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